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新英語教育研究会神奈川支部HP

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そよ風の誘惑 Have You Never Been Mellow

■ 文法の展開例その1:mellowの語義に注目
 電子辞書隆盛の昨今、授業ではぜひともアナログな紙の辞書ならではの魅力あふれる例文に触れさせたい。『ロングマン現代英英』は家に第1~4版まで揃え、その例文の違いに感心している。(前任校のN先生に「第1版ではmake a fool of oneselfを引くとおもしろいんです」と伺い、古本屋であわてて入手、引いて納得。なるほど、これでは電子辞書には載りそうもない。電子辞書なんてつまらんな。)
[その辞書の例文:We hear the old doctor has made a fool of himself with a young girl he was treating. ( = has formed or tried to form a sexual relationship with her ) 老医師が若い女の子に関係を迫って、物笑いになった、ということです]

 さて、この歌ではmellowが大切なキーワードだ。
辞書を引くとmallowは「(果物などが)熟している」「(音・光・色)などが柔らかい」という意味がある。the mellow sound of a trombone(トロンボーンのメロウな音)[Longman 2nd]など、どうやら色や音のイメージがにつかわしいようだ。
 しかし、どうも第1版をみると、ワインが熟成するイメージがぴったりだ。
 動詞だと、A few more years will mellow the wine.(あと数年するとワインがまろやかになる)[Longman 1st]She used to have a fierce temper, but sheユs got mellower as sheユs got older.(年を取って丸くなった)[Longman 1st]がある。このようにイメージの膨らむ単語は、英英辞典の潤いある例文で楽しみたいものだ。

■ 文法の展開例その2:主語の設け方
英語の主語の設け方は大別して3つある。
1)人
  ・話し手/聞き手
  ・動作主
2) こと
  ・事柄
  ・Itを仮主語にする
  ・話し手と物との関係/状況
3)もの
  ・無生物主語
  ・ 物/者(人を物に見立て評価/叙述)

 そこで、Now you're not hard to understand.(あなたのことは今なら分かるわ)を3つのスタイルで書いてみると以下のようになる。
人   I don't find it hard to understand you.
    難しくない あなたを理解する…
事   It is not hard to understand you.
    難しくない     あなたを理解する…
者   You're not hard to understand.
    あなたのことは  理解しがたくない…

 どの文章の和訳も「あなたのことは理解するのはむずかしくない」である。findがあっても「~だとわかった」と訳す必要はない。例えば「右に曲がると郵便局がある」はTurn right, ad youユll find a post office.であるし、「部屋にはいると、彼がソファに寝ていた」はWhen I got in, I found him lying on the sofa.(私が入って[観ると]彼がソファに横たわっていて…)となる。findはあくまでも人を主語にしたスタイルにする調整役なのだ。

■ 読解の展開例その1:誰が誰に歌っているか?
 この歌は、「誰」が「誰」に歌いかけているのだろうか? 歌詞を読みとると、あなた(You)は走り回って(running around)生き急いでいる(in a hurry)らしい。そして私(I)はかつてはあなたみたいだった(I was like you)と回想してアドバイスしているから、年上の人なのだろう。
 歌詞を読み解く鍵は最後の「あなたは手を取ってくれる‘誰か’が必要なのよ」(you need someone to take your hand)である。これは結婚相手を暗示しており、take your handが単に「手を取る」ではないということに気をつけたい。フランス語のdemander ta mainは、直訳すれば「手を求める」だがその意味は「求婚する」である。英語でも同じだろうと類推できる。
 そこで私はこんなイメージを想像してみた。30代の既婚女性が20代の独身キャリアウーマンに向かって「仕事ばかりバリバリしないで肩の力を抜いて、身近な男性に目を向けてみなさいな」と諭している歌だと。この解釈、いかがでしょう?

■ 読解の展開例その2:幸福について考える
 昨今大流行の「負け犬論争」を踏まえていうと、結婚するしない、子どものいるいないが勝ち負けの基準ではないと思う、と30代独身が言ってしまう自体が負け犬の遠吠え(?)というパラドックス。(この呪縛、キツイですな~。)それはさておき、自分と周囲にいる他者が共に幸せかということに焦点をあわせ、自分らしく行けばいい。それがまさにこの歌のいわんとしていることだと思う。
 私はこの歌を扱うときには「幸福の青い鳥はどこに?」と題して、三木清『人生論ノート』(新潮文庫)とアラン『幸福論』の抜粋をプリントに載せている。アランの「われわれが他人の幸福を考えねばならないのは当然だが、自分を愛してくれる人たちのためになし得る最善事は、やはり自分が幸福になることだ、ということは十分にいいつくされてはいない。」(社会思想社教養文庫p.270)が特に好きな一節だ。「幸福とは自然にまかせて『なるようになる』ものではなく、自らの意志で『なるようにする』=『義務』だという視点が西洋的だ。『なんかいいことないかな』なんてぼやいているのは、幸福である義務の不履行だ!」と私はコメントを添えて配布しているのだが、お得意の「人に説教して自分で納得」のパタンである。とほほ。



■ Have You Never Been Mellow Olivia Newton-John
        そよ風の誘惑(♪オリビア・ニュートンジョン)

 あったわ、‘そんな頃’が…(?その時私は
 生き急いでいた/今のあなたのように)
 私はあなたみたいだった。
 あったわ、‘そんな頃’が…( その時私は
 自分の観点と言おうとしていた)
 私はあなたみたいだった。
 私は《あなた》にさせるつもりはない〈 眉をひそめる…〉
 私は《あなた》に望んでいるの〈 ペースを落とす…〉

*  今までに和らいだ気持ちになったことがあるかしら?
 あるかしら、今までに
 心の中からホッとした気分を探そうとしたことが?
 今までに和らいだ気持ちになったことがあるかしら
 自分の歌を聴いただけで?
 あるかしら、あなたが何かして、誰か他の人が
 力づけられたなんてことが?

 走り回って…(あなたが現在しているように)
 頭を上げて雲の中に入れて[=夢想して]…
 私はあなたみたいだった。
 今までに1度もなかったでしょ、横たわって、
 靴を蹴って脱いで、目を閉じるなんてこと。
 私はあなたみたいだった。
 あなたのことは今なら分かるわ、つまり…
 あなたは‘誰か’が必要なのよ(?あなたの手を取る…)


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